梅田(大阪)では様々な再開発プロジェクトが進行中だ。このエリアで最も歴史あるランドマーク的存在の梅田阪急ビルも2012年春、新たに生まれ変わる。その地に根付き、その地を熟知し、沿線に住まう人々の暮らしを共に創造してきた阪急電鉄株式会社(以下、阪急)。阪急の心臓部ともいえる西日本最大のターミナル、阪急梅田駅を中心に描く新しい街づくりとは?

阪急電鉄株式会社 取締役 諸冨隆一氏
昭和57年3月慶應義塾大学商学部卒業、阪急電鉄株式会社に入社。平成16年6月に不動産事業本部彩都開発事業部長、18年4月に不動産事業本部不動産開発部長、20年4月に阪急電鉄株式会社取締役に就任(不動産事業本部副本部長 兼 不動産開発部長)。現職に至る

生まれ変わる梅田のランドマーク

 1日約250万人の乗降客がある大阪・梅田地区。阪急、JR、阪神、大阪市営地下鉄御堂筋線、谷町線、四ツ橋線の6線が集結する大阪の表玄関だ。伊丹・関西の両空港への鉄道やシャトルバスなどの利便性も高く、全国・海外とのアクセスも便利な立地である。
 梅田阪急ビルには、1929(昭和4)年に世界初のターミナルデパートとして開業以来、今もなお関西における都市型百貨店トップのブランド力と売り上げを誇る阪急百貨店(うめだ本店)が入居している。老朽化への対応・耐震性能の向上はもとより、都市再生特別措置法に基づく容積率の緩和を受け、今般の建替えによって日本最大級の百貨店規模を確保するとともに、大阪地区の中心「梅田」のランドマークにふさわしい大型複合商業ビルに生まれ変わる。
 新・梅田阪急ビルは、容積率が従来の1.8倍、延床面積も2倍以上の約25万2000平方メートルとなる。地下2階、地上12階の建物は、地下2階、地上41階建てへと超高層化する。施設構成は低層部(地下2~地上13階、14階は機械室)の百貨店棟と、高層部(地上15~41階)のオフィス棟から成り、地上15階にはスカイロビーが設けられ、御堂筋の景観を一望する開放空間を配し、百貨店部分にも連絡する。

 バリアフリーにも配慮する。建設時期の違いなどから周辺地下通路との間に生じていた段差をなくすとともに、地下1階から地上をつなぐエスカレーターおよびエレベーターを設置し、阪急梅田駅から大阪市営地下鉄・梅田駅、東梅田駅、阪神・梅田駅方面を結ぶ交通動線をフラット化する。
 また、1階に設けられる中央コンコースは柱をなくし、南北両端にスペースを設けて、新しい百貨店やオフィスの玄関口にふさわしい開放的な空間を演出する。
 オフィス棟もハイグレードだ。大阪エリアのビルランクでAクラスとされるオフィスタワーは40数棟しかないが、その中でも格段にスペックの高いSクラスのビルとしてすでに評価は高い。1フロアは約850坪もあり、これまでスペースの問題で数階に分かれての業務を余儀なくされてきた企業も同一フロアで効率よく仕事ができるようになる。また、最低50坪弱で区切れるフロアも用意されており、立地の良さを生かしたショールーム型の企業等にも利用を見込んでいる。

求められる強いリーダーシップ

 今般の建替えに伴い、百貨店を主体とした商業中心から、多様性をもった街づくりへと変えていきたい――同社不動産事業本部不動産開発部長の諸冨隆一取締役は語る。阪急は、公共空間の整備、周辺施設との回遊性向上など、関西最大都市「大阪」の玄関口である「梅田」の都市再生という大きなミッション(使命)を負う。
「そのためには、梅田を『面』で捉えていく視点が重要になってきます」。
 これまで阪急、阪神、JRそれぞれが、駅を中心に拡張展開し、その接点でつながる集合体として形成されてきた梅田であるが、諸冨氏がこれからの梅田に必要な要素として着目するのは「目的がなくても楽しい街歩き」だ。「街歩きの楽しみを作ることが必要だと思うのです。先進性と猥雑性がディープに同居しているのが大阪。歴史的にアジアの方が多く住んでいる街ゆえに、文化的にもアジアとの親和性が高く、食べ物もとても美味しい。だからこそ、今後は歩きながら楽しめるという点を大きな強みとして打ち出していきたい。そのためには、ここで暮らす人、活動する人たちが小規模ながらも各々やってきたことをひとつの大きな動きとして捉えてみること、つまり『エリアマネジメント活動』を積極的にやっていかなければなりません」。

 エリアマネジメントには、周辺の企業だけでなく地域の自治会、そして行政との協業も欠かせないが、自治体の財政事情の厳しい大阪では、公共空間の管理を民間に託す動きがあるという。「民間の力で新しい公を」――公共空間での民間の事業活動を一部認める代わりに、その公共空間の管理やコストに関して民間がその責任の一部を負うというものだ。
 街づくりは、空間形成というハード面だけでは成し得ない。エリアマネジメントを通じ、大阪ならではのフレンドリーな土地柄を活かした道案内から地域イベントまで、人間関係を中心としたソフト面での充実を図らなければならない。
 多くの企業体・人々が関わるこの新しいうねりの中で、関西を代表する老舗・阪急は今、強いリーダーシップを求められている。

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